

糖尿病の人は、そうでない人に比べて、眠れないことで悩んでいる方が多く、糖尿病の人のおよそ3~4人に1人が「床についてから寝つけない」「夜中や早朝に目が覚めて、その後眠れない」「よく眠った感じがしない」といったことで悩んでいることが、いくつかの研究から分かっています。
糖尿病があると、喉の渇きがあったり、夜、トイレに行くことが多くなりがちで、これらが眠りを妨げることがあります。また、糖尿病によって痛みやしびれなどの神経の症状が生じていると、これも眠れない原因となります。さらに、夜、寝ている間に低血糖がおきたらどうしよう、という不安によって眠れない人もいらっしゃいます。
眠りの状態は血糖コントロールに悪い影響を与える可能性があることも分かってきています。
健康な人でも、強制的に睡眠時間を短くすると血糖値が高くなります。
その原因として、睡眠時間が短くなると、インスリンの働きを悪くするホルモンの分泌が多くなるという研究結果があります。また、不眠のある糖尿病の人に睡眠を助ける薬を使ってもらったところ、血糖コントロールがよくなったという研究もあります。
糖尿病と同じように、高血圧の人にも、眠れないことで悩んでいる人が多いことが分かっています。
高血圧の人がなぜ眠れない人が多いか、原因はよくわかっていませんが、睡眠時無呼吸症候群を伴いやすいことや、高血圧治療に使われる薬の副作用、あるいは、日中のストレスが強いために血圧が高くなっている人では、同じストレスで眠りが妨げられることなどが考えられます。
血圧の調整には交感神経という神経系が深く関与しております。夜眠っている間は、交感神経は活動を休め、血圧は低くなるよう調節されています。
ところが、夜眠れないと、交感神経が高ぶったままになってしまうため、夜の血圧が下がらないだけでなく、朝や翌日の血圧まで高くなってしまうことが分かっています。
実際に、睡眠時間の短い人、寝つきの悪い人、夜中に目が覚める人は、その後、数年の間に高血圧になる割合が高いという研究結果もあります。
夜、血圧が下がらない人や、早朝の血圧の上昇が強い人には、高血圧の合併症である心筋梗塞や脳卒中が多いことも分かっています。
高血圧の方にとって、夜や早朝の血圧が高くならないようにすることは、合併症を防ぐためにとても大切です。

眠れないことで悩むことはそれ自体がつらいことでしょうし、昼間の疲れや眠気など、生活のいろいろな点で困っていらっしゃると思いますが、それだけでなく眠れないことは糖尿病、高血圧の治療の妨げになっている可能性もあります。
なかなか寝つけない、夜中や早朝に目が覚めて、その後眠れない、といった症状が続くときは、どんなに頑張って眠ろうとしてもなかなか上手くいきません。
大切な生活習慣のひとつでありながら、睡眠は自分の意思ではコントロールできないからこそ、眠りで困っていらっしゃる皆様には、ひとりで悩んだり我慢したりせずに、糖尿病や高血圧の治療を受けている主治医に、あるいはかかりつけの医師や近所の医院・病院でご相談して頂きたいと思います。
医師はあなたの睡眠の状態を聞き、もしあなたが気付いていない生活の中の問題点などがあれば、それを修正するようアドバイスしてくれるでしょう。
そして必要があると判断したときには、医師はあなたの症状にあった眠りを助ける薬を処方します。
医師が処方する眠りを助ける薬(睡眠薬)は、こわい薬と思っている人が少なくありません。
しかし、こうした睡眠薬の悪いイメージはほとんどが誤解です。
現在主に使われている睡眠薬は、脳の興奮を抑え、自然な眠りに導く働きをもった新しいタイプの薬です。医師・薬剤師の指示を守って服用すれば、依存症や認知症の原因になることはなく、正しく使う限り安全性の高い薬です。
医師から睡眠薬の処方を受けたときには、必ず医師の指示を守って服用してください。とくにアルコールと一緒に服用しない、服用したらすぐに床に就くといったことを守って頂きたいと思います。
他にも何か不都合を感じることがあれば、遠慮なく医師に相談してください。

よく眠れないというとき、最初に考えなければならないのは、生活の中で睡眠を妨げているようなことをしていないか?ということです。例えば夕食後のカフェインを含む飲み物、寝る前の熱い風呂やタバコは寝つきを悪くします。寝室の光や音、温度なども睡眠に大きな影響があります。
また、アルコールの力を借りて眠ろうとする方もたくさんいらっしゃいますが、寝酒は実は眠りの質を悪くしており、睡眠にはむしろ悪い影響を与えます。晩酌など適量のお酒を楽しむことはよいですが、寝酒を習慣にするのは絶対に控えてください。
眠れない、つまり不眠の診断では、「いつ頃から眠れなくなったのか?」、「その心当たりになる原因はあるか?」、「眠るまでにどのくらいの時間がかかるか?」、「不眠以外に何か別の症状はないか?」などの問診が行われます。ですから受診前には、ご自身の不眠状態をあらかじめメモに整理する などして、診察時にスムーズに応対できるようにしておくとよいでしょう。
また、眠れないと訴える方の中には、不眠のほかに、うつ病、睡眠時無呼吸症候群、むずむず脚症候群などの病気がかくれていることがあります。寝ている間に、自分では気づかない症状が現れていることもありますので、家族や周りの方にも協力してもらって、症状を正確に医師に伝えることが大切です。

食事や運動が、いろいろな病気の治療や健康のために大切なことは皆さんご存知のことと思います。
例えば高血圧や糖尿病の人は、食事でとるカロリーや塩分に気をつけたり、軽い運動をするよう
医師から勧められていることでしょう。
実は睡眠も食事や運動と同じように心や体にさまざまな影響を与える重要な生活習慣のひとつです。
睡眠が十分とれないと、翌日の疲れや精神的ストレスだけでなく、内臓や体全体の代謝にもストレスがたまり、それが高血圧や糖尿病などの生活習慣病の引き金になることもあります。
また生活習慣病以外にも、皮膚炎や夜間頻尿などさまざまな病気の方は、眠れないで困っている人がたくさんいらっしゃり、病気の治療に悪影響を及ぼしていることもあります。
睡眠が食事や運動と違うのは、自分自身の意思だけでコントロールできないことです。
眠れない状態、つまり不眠は、心身の健康を維持するために必要な夜間の睡眠が量的または質的に不足して、昼間の日常生活に支障を来したり、本人が大きなストレスを抱え込んでいる状態をいいます。ひとくちに不眠といってもいろいろなタイプがあります。
●入眠障害
布団に入ってもなかなか寝つけないタイプ。不眠の中ではもっとも訴えの多い症状。
●中途覚醒
夜中に何度も目が覚めてしまい再び寝つくのが難しいタイプ。
●熟眠障害
睡眠時間のわりには、朝起きたときにぐっすり眠った感じがしないタイプ。
●早朝覚醒
朝早く目覚めてしまい、まだ眠りたいのに眠れなくなってしまうタイプ。
高齢者に多いのが特徴。
ちょっとした心配ごとや悩みがあって眠れない、旅行先で眠れなくなったという経験は誰にでもあると思います。このような一時的な環境の変化や心理的ストレスで眠れないということは、その原因が解決すれば眠れるようになります。
しかし眠れないことで、心と体にストレスがたまり、仕事や生活がうまくいかなくなったり、「今日もまた眠れないかも」と眠りのことばかり気になるようでしたら、かかりつけの医師や近所の医院・病院でご相談いただきたいと思います。
